平原草々の日記

思ったこと、音楽、本の感想など

ナクソスの『シューベルト歌曲集』

ナクソスNAXOS)から出ている、リンダ・ラッセルとピーター・ヒルによる『シューベルト歌曲集』を紹介します。

このアルバムは、その当時、毎年ナクソスが紙媒体で出していたCDカタログに載っていたレビューを読んで買いました。

リンダ・ラッセルの歌唱も素晴らしいのですが、伴奏を弾いているピーター・ヒルの演奏がとても優しく素敵で、伴奏の部分をよく聴いたりしています。

最初の「ガニュメート D544」の前奏の、穏やかな足取りのピアノに続き、ラッセルの澄んだ歌声が聞こえてくると、ヒルの寄り添うような伴奏と相俟って、すっかり、シューベルトの歌の世界に誘い込まれています。上昇していく歌世界に連れて、聴いている側の心も天に昇っていくような気がします。

どの曲も、触れたら壊れそうな繊細な表情で演奏されていますが、特に好きなのは、「夜と夢 D827」と「春に D882」、「君は安らぎ D776」などです。

「春に D822」は、春の夢見るような情景の中を漂う序盤、暗い影を落とす中間部を挟んで、慈しむような終結部を聴くと、シューベルトの歌曲の無垢の世界の神髄に触れるように感じます。

アルバムを通して穏やかな世界に包まれており、大きな起伏には乏しいですが、心が疲れている時に聴くと、そっと寄り添って慰めてくれるようなアルバムです。