平原草々の日記

思ったこと、音楽、本の感想など

マルコム『ウィトゲンシュタイン』

ノーマン・マルコムの『ウィトゲンシュタイン』(板坂元訳)を紹介します。

平凡社ライブラリーから出ているもので読みました。

学生の頃、哲学者に関する本で初めて読んだのが、永井均さんの『〈魂〉に対する態度』という本でした。

何故この本を選んだのかはよく覚えていないのですが、そのタイトルから、おそらく、哲学に関する本とは思わず、生きづらさを感じている自分への何らかのヒントが書かれている本ではないかと思って読んでみようとしたのかもしれません。

そして、この中でウィトゲンシュタインに出会いました。

その思想を理解することは大変難しかったですが、哲学者の「誠実さ」といったものが強く感じられ、気になっていました。

その後、同じく永井均さんの『ウィトゲンシュタイン入門』(ちくま新書)を読んで、難しいなりにもなんとなくその思想が見えてくるように思いましたが、それよりも、その生き方が真摯ですばらしいように思っていました。

そして、マルコムの『ウィトゲンシュタイン』を読みました。

マルコムは、ウィトゲンシュタインの教え子であり、その身近にいた人物の一人なので、日常生活に至るまでのさまざまな様子が、ヴィヴィッドに描かれていて、いろいろなエピソードを通じて、その哲学者のひたむきな生き方を知ることができます。

おそらく今では、いろいろな診断名が考えられる状態だとは思いますが、哲学をすることに身を捧げ、自分の信念を貫き、自分の世界を作り上げ生きていることは、苦難も多かったと思いますが、素晴らしいことも多かったのではないかと思います。

私は、時折、凄まじく鬱屈とした気分に襲われ、自分でもどうしようもないくらいに塞ぎ込んでしまうことがあります。

そうした時に、この本を読み、ウィトゲンシュタインの生き方に触れると、何か、違うところに回路が出来て、憂鬱がそこを通ってふっと流れ去り、なんとなく心が楽になることがありました。

偉大な人物の伝記を読む喜びは、道はいろいろあって、まだまだ先に進めると教えてくれることにあるように思います。

思い悩んだ時に読み返したいと思います。