平原草々の日記

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ミケランジェリの「ドビュッシー:前奏曲集第2巻」

ミケランジェリは昔から好きなピアニストで、EMIとDGの録音集の他に、auraなどのCDも所有してよく聴いていました。
以前、シューマン「謝肉祭」の記事で、1973年のルガーノでのライヴ演奏について書きましたが、私の中では「謝肉祭」の演奏で、あの演奏を超えるものにまだ出会っていません。

また、私自身が拙いピアノで謝肉祭を弾こうとするときは、ミケランジェリのような響きを出すことを目標に演奏したりしています。

そんなミケランジェリの録音の中で、特に好きなのがこのドビュッシーの「前奏曲集第2巻」(DG)です。

ミケランジェリがDGに録音したドビュッシー演奏はどれも世評が高く、私も素晴らしいと思って聴いていますが、その中でも、この前奏曲集の第2巻がとりわけ素晴らしいと思っています。

晩年に近い時期の演奏とあって、以前のような技巧のキレのよさというよりも、ややべったりとした、若干鈍重と感じられるような表現が目立つ演奏ですが、その表現がこの第2巻の独自の世界にはとてもマッチしているように思えて、この難解な作品集の解釈としては、自分の好みに一番合ったものになります。

この第2巻は、夜の世界というか、ゴシックロマン風というか、そんな内容に感じられ、また第1巻に比べて抽象度も増している感じがし、その世界観を把握するのが難しい曲集のように感じていました。

その中で、このミケランジェリの演奏は、ピアノの音の美しさはもちろんのこと、まるで深い海の底に潜って、発光する深海魚の群れの動きを眺めるかのように、濃い闇の中から一曲一曲の煌めきを眺めるような趣きがあります。

その世界に浸ることの至福はなんとも言いようのないものです。

最初の「霧」を聴き始めると、あっという間にその世界に引き込まれ、そのまま全曲を聴き通してしまうような、そんな魅力のあるアルバムだと思います。