平原草々の日記

思ったこと、音楽、本の感想など

三浦哲郎「たきび」

三浦哲郎さんの短編「たきび」を紹介します。
この作品には、学生時代に模試の小説の問題として出会いました。
どこか忘れがたい、甘い感傷を誘う掌編だったので、その後、この作品が収められた、新潮文庫の短編集モザイクⅡ『ふなうた』を購入して改めて読みました。
この短編集は、短いなかにも人間の機微を繊細に織り込んだ作品がならんだ、滋味豊かな作品集であり、平易な文章ながら、職人技を思わせる無駄の無さで、現代日本語の短編集としては一級品であると感じています。
この「たきび」は、たきびをとおして結ばれた夫婦の話ですが、その内容、ストーリーの運びかた、文章の洗練、どれをとってもため息が出るほど巧みに書かれた作品だと思います。
二人が結ばれるきっかけとなった出来事は悲惨でも、それを乗り越えた二人はきっと平凡ではあっても、幸福だったのだろうと思います。
こんな短編が書けたら素敵だろうなと思いますが、この短編集にはそんな作品が並んでいて、とても素晴らしいと感じています。
私は文庫本でこの2巻目しか所有していないのですが、今は完本版が単行本で発売されているということなので、買って読んでみようかなと思っています。