平原草々の日記

思ったこと、音楽、本の感想など

三島由紀夫『暁の寺』

豊饒の海』第三巻『暁の寺』を読み終わりました。

とても面白かったです。

今回読み返してみて、高校生の時に読んだ時から一転して、とても印象深く読むことができました。

それは、自分が本多に近い年になったこともあると思います。

ここに描かれているタイやインドでの印象、日本でのジン・ジャンを巡る葛藤が、妙に生々しいものに感じられました。

まず、インドを巡る描写の素晴らしさは格別のものだと思いました。著者の筆も生き生きとしており、著者自身もインドに大きな印象を受けたことが窺われるようでした。

また、今回の転生の主人公ジン・ジャンの魅力もさることながら、本多の中年の執着心に、他人事ではない感慨を抱いたりしてしまいました。

本多の思考や行動を読んでいると、身に詰まされる場面が何回もあり、私自身の「老い」をもまざまざと感じさせられ、また、そこから生まれる新しい執着についても、どこか、隠し事を不意に言い当てられたような跋の悪さがありました。

そんなこともあり、今回『春の雪』『奔馬』と読んできた中で、この『暁の寺』が一番心に染みた作品になりました。

次は、いよいよ最終巻『天人五衰』です。

楽しみに読んでいきたいです。