平原草々の日記

思ったこと、音楽、本の感想など

三島由紀夫『天人五衰』

豊饒の海』第四巻『天人五衰』を読み終わりました。
とても素晴らしかったです。
今回『豊饒の海』全四巻を読み返した中で、一番深い感銘を受けました。
この作品には、世界の真実を垣間見せてくれる力があったように思われました。
この巻の主人公は、最終的に廃人のようになり、本多の記憶さえ、夏の庭に虚ろに消え入るように、あらゆる事象が解体に向かって突き進むような作品ですが、それこそが、おそらく今現在においても、私たちが生きている世界であり、その世界の光景を圧倒的な筆力で、否応なしに突きつけているように感じました。
ここに描かれた世界の中で、私たちがどのように生きていくのかを考えなければならないのではないかと思いました。辺り一面に噴出したニヒリズム、虚無の最中で。

今回読み返したところ、私の評価は『天人五衰』>『暁の寺』>『春の雪』>『奔馬』といったように変わりました。
しかし、どの作品もとても素晴らしく、澁澤龍彦も言う通り「戦後文学最高の達成」であると思います。
この作品に迫るような長編小説を、また探して読みたいと思いました。